これから何処に行こう by 澤部



オーディオからはパラダイス・ガラージの名曲「中之島図書館」が。
僕はこの曲がすごく好きで、ライブでもリクエストしたが、
それは叶わなかった。歌詞を用意していなかったのだそうだ。
この曲、「実験の夜、発見の朝」で一番好きかも。
豪華なゲストを迎えて作られたアルバムの中では、
弾き語りだし、地味な存在なのかもしれないけども、
僕はその中にとても大きなものを見出すことができた。
簡素なギターの音に乗って彼はうたう。
「橋を渡れば19の春の 桜が川面に流れていく」
僕はまだ18だが、自転車で学校に向かう途中の南ときわ台
なんという川でなんという橋なのかは知らないが、
桜の季節が来るとその橋の上はとてもきれいだったのだ。
川に突き出すように育った桜の木。
だれしも彼らに勝つことはできない、と実感させられる。
その橋を渡ると大きな交差点があって、
トラックがうるさいぐらいにしゃべりまくっていて、
情緒もへったくれもなかったんだけれども。
それでもあの橋を渡る多くの人々もあの桜に魅了されていたはずだ。
そして誰もがこの歌を口ずさむべきだったのだ。

実験の夜、発見の朝

実験の夜、発見の朝

その橋から桜を眺める機会も今年からはだいぶ減る。
というか、ほとんどない。
去年で見納めだったらもっと大切にするべきだった。
時間は経ってからことの重大さを知らせる。
そうやって、欲しいものには何一つ触れたことないと思い出すのだ。