4月の現状 by さわべ



口笛が似合う夜、似合わない夜。
夜はその二つで構成されていたらいいな。


夜の9時過ぎ、池袋。
急に思い立ってフィッシュマンズの8月の現状を取り出した。
僕は、「フィッシュマンズでいちばんすきな曲はなに?」と、訊かれたら、
「8月の現状の、新しい人」と言うだろう。たぶんね。
確かにロング・シーズンとかもすばらしいが、このすばらしさには及ばない。
この曲は、佐藤伸治のシンガー、いや、表現者としての頂点だ。
(こんなこと、前にも書いた気がするなぁ。まぁ、置いておこう)
この勢いでアルバム作られていたら、すごいことになっていたんだろうな。
もし僕があと2週間しか命がない、といわれたら、
金剛地さんとかには悪い気がするが、
この「新しい人」を噛み締めながら死にたいものだ。
(と、いっても自殺願望なんかありゃしないですよ。
毎日、悩みがあって、楽しくって、たまにつらくって、いい具合です)
そして、「死んじまったな」と過去で片付けられてしまうより、
彼のように、何かが残る死にしたい。彼には失礼かもしれないが。
確かに彼の死により、孤独を味わった人がたくさんいるのは知っている。
でも、彼の死は、音楽に直結していたように思う。
それは、ひょっとしたら、彼にとっては本望だったのかもしれないですね。


澤部渡の4月の現状は、口笛が似合う夜に、傾いています。