給水塔に登り暗い町を見下ろす by 澤部



僕が高2になったとき、僕の通っている学校は、
何を間違えたのか新校舎を建てた。
居心地のいい旧校舎は取り壊され、
僕は幾分か寂しい思いをした。
新校舎になってからは大していいこともなく、
ただひとつ利点を挙げるのなら、
見晴らしはとてもいい。そのくらいだった。
夜中まで残った学校で新宿方面がきらきら光っているのを、
僕は一度だけ見たことがあるのだが、
あの光は忘れがたい説得力があった。
昼間は昼間で天気がよければ富士山も見える。
そして遠くに古めかしい雰囲気をかもし出す給水塔が見えた。
特に学校からの帰り道、遠くに鎮座する彼がよく見えた。
背の低い建物の真ん中に堂々とした風貌で彼は建っていた。
その彼の目の前を通る機会はそれほどなかったのだが、
やはり大きい建物なので、
自転車で下校するときは大体、近づくと、
日大病院は近いな、と思ったりしていたのを思い出した。
さまざまな音楽で通り過ぎる風景。
そんな彼も去年の6月に取り壊されてしまった。
どれほど季節が過ぎても、印象は消えることなく、
すこし寂しく思ってしまうんだけれども。
いつかあの建物に登ってみたい、とよく考えていたものだ。


今日の印象派
CITROBAL/YOUTH
あえてアルバム単位じゃなくて曲単位で。
彼女のある意味での青臭さが残る名曲。
セミフォで美弥子さんがこの曲を歌ったことがあるんだけれども、
そのときの演奏が、もう3年近く経とうとしているのに、
なぜだか忘れられない。
金剛地さん、ギター(位置)高いよ」
とぼやいていたのもよく覚えている。
彼女が歌ったとのとは少し逆だが、
僕が思ったようりも、君はもう大人なのかもしれない。
そして思ったより早く季節は変わってしまったのだ。
僕を、置いていかないでくれ。
もしくは、一緒に死んでください。