なかった by 澤部



都合のいい男の妄想はいつも目の前で消えてしまう。
女王はもう死んだ。
心に茨を持つ少年もここを出て行った。
僕の手に残ったものはあるのだろうか。
誰か僕の声を聞いてくれたことがあっただろうか。
友人もそこそこいて、女友達を自転車の後ろに乗せたり、
レコード屋の店長とすこし話したり、実は孤独ではない。
でも、胸の奥の空白を埋めるものがない。
いや、実際にはあるんだけれど、それをうまく利用することができない。
ああ、モリッシー、僕にはあなたの孤独が必要だ。
そして豊田道倫、あなたの孤独も必要だ。
太宰治の孤独は要らない。彼の孤独はいささか面倒くさい。
彼らの孤独を吸収してもこの空白を埋めることができない、
そう知ったのは、スミスのThe Queen Is Deadを2回聴いた後だった。