ロング・シーズン by 澤部



煮え切らないことや、
どうにもできない問題やが多い。
僕はいま非常に腹が立っている。
でもその怒りを納める場所が無い。
いま、iTunesでアコギを片手にフィッシュマンズ
彼らが最高のライブバンドだったことの証、
「男達の別れ」より、ロング・シーズンを流している。
うちのデスクトップのパソコンの最大音量である「32」で。
それほどの爆音ではないが音が僕にだけにぶつかってくる。
部屋のスピーカーの配置は少しおかしいので、
直接的に僕にぶつかってこない。
それはそれでいとおしいのだからいいんだけれども。
ところで僕はひょっとしたら誰かしらの、
生きている証がほしいのかもしれない。
だから完成されすぎたスタジオ盤よりも、
遥かに人間くさいライブ盤を選んで聴いているのであろう。
気持ちよすぎる。ああ、ライブバンド。
もう佐藤さんのギターソロは完全に弾けてしまう。
この41分31秒もあるこの曲を僕はこの人生何回聴いただろう。
男達の別れを買ったのは高1の夏。
 (高島平の素晴らしかったCDショップ、十字屋で買ったんだ。
  閉店セールでさ。半額だった。
  ほかにもXTCの紙ジャケも買ったし、
  コレクターズも買った。古市さんのサインの入った、
  グリッター・チューンのポスターは貼ってある。
  額縁はふさわしくない。画鋲でとめてある)
あれから2年経ったが、いつ聴いてもあのときの衝動が蘇る。
最低100回は聴いているはずだ。いや、冗談抜きで。
一時は通学・帰宅の両方に使用していた時期もあったくらいだもの。
100は軽いな。
聴くたび聴くたびに新しい感情が生まれてくる。
パーパパパッパッパパー、パパパッパッパパー、パパパーパー
というコーラスが終わって、佐藤さんがギター一本で、
「夕暮れ時を二人で走っていくー、風をー呼んでー君をぉ呼んでー。
東京の街の隅から隅までー、ぼくらー半分ー夢の中ー」
と歌い上げる。そしてピアノのリフレインが始まる。
僕の気分はだんだんと落ち着いてくる。
今わかった。音楽は僕を救ってくれない。
こうしてロングシーズンを聴いてると、そう思えてきた。
最高に気持ちいい空間を提供してくれるのは、
とってもうれしい。
でもそれをどう取ろうと僕からの一方的な行為でしかない。
それを考えると少し切ないけれども、
それは聴き手の宿命なのかもしれないなぁ。


ロングシーズンが終わった。
曲が終わったのにも関わらず、
10秒経っても歓声が聞こえないのが、
当時の凄まじさを物語っている。
あの空間にいることができたらなぁ。
と、心の底から、思ってしまった。
きっとこれが心という言葉の意味かもしれない。
よくわからんけどさ。